Tuesday, April 17, 2018

直火コーヒー

深夜1時。
学術関連の仕事が大量に残っているため、睡眠をあきらめて作業しようと覚悟を決めた。こういうときは、コーヒーをドリップするに限る。
覚悟を決めて学会に尽くす一種の儀式である。

ふうと一息ついて、儀式を遂行するために、コーヒーを淹れようとコーヒー豆の瓶を手に取る。
虚空。何もない。

生豆を洗っておいておくざるの中には、1週間分の豆が放置されていた。今週土日は面倒で焙煎してなかった。瓶の中にコーヒー豆がないのはそのためだった。

いつもはフライパンで焙煎するが、時間がかかる。今すぐ飲みたいのに、それでは時間がかかりすぎる。スーパーが開いている時間なら買いに行くが、1時に開いているところにいくにはちと遠い。ここで焙煎するのが手っ取り早いと誰でも想像できる状況だった。

ようはさっと焙煎できれば満足するわけである。焙煎度合=温度×時間×謎の係数が成り立つため、温度を上げればその分早く焙煎が仕上がる。フライパンよりも熱を加えることができれば、その分はやくコーヒーが飲めるわけである。

こういうときは、すべての覚悟が焙煎に向くもので、生豆が入ったざるをそのまま火にかけた。直火である。直火は、ざるを振り続け、いい塩梅で火をかけないければ、こげこげの炭ができるか、中まで火が通っていない生焼けができてしまう。とにかくフライパンより高難度である。普段は避ける難所でも覚悟が決まれば進める。5分間ざるを振り、豆に火が付いたら、火を弱めて、振り消し、収まったらまた火を強くする、を繰り返すだけである。パチパチと2段階目がハジが始まり、少し収まるまで、ざるを振り続けた。良いころ合いで「もういいや」と独り言をつぶやき、ざるを挙げた。

出来上がった焙煎豆は火にかけていたので超熱い。このままミルに入れようもんなら、確実にミルがおかしくなる。
豆を冷ます必要がある。外は寒い。外に出した。でもすぐには冷めてくれなかった。

コーヒー豆に水気は禁物である。劣化が進みやすいためだ。しかし、今は緊急事態。水をさっとかけ、ざるを振った。じゅーーーーーっといって蒸発し、を3回繰り返す。

豆が触れる程度の温度になったのを確認して、ミルに投入。
びぃぃぃんと粉砕し、すぐさまドリップした。

ドリップはいつものプロセスである。
専用のコップにドリッパーを置き、ペーパードリップする。

できたコーヒーをひとくちすすった。・・・・驚いた。最高にうまい。これまでのフライパンでじっくり焼いたものより、風で覚ましたものよりよほど美味である。その辺のコーヒー専門店にも負けないくらいうまい焙煎具合である。香りが抜群に良い。いつしか飲んだコピルアクのような香りである。歯の隙間から、パインとチェリーの汁が湧いてこぼれるようだ。たまらん。これはたまらんうまさだ。直火。直火。直火最高である。

しばらく狂ったように直火コーヒーを飲んだ。

気づいたらコーヒーで遊び始めて1時間半が経過していた。学会の仕事は1mmも進んでいなかった。

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