ぐっさんは10年近く鉛筆型のシャープペンシルを愛用している.
一時,流行して私も使ったことがあるが,使い勝手が悪かった記憶がある.
ぐっさんは,それを10年近く使っている.
これだけを聞くと変な奴だと思ってしまうが,あんな過去の話を聞いたら,誰もが納得すると思う.
ぐっさんがまだハワイに住んでいたとき,キャサリンという彼女がいた.
キャサリンは,ちょっと丸めだが,かわいらしい女だった.
性格もよく,よく笑う子だった.
キャサリンは日本人なので,漢字では伽鎖凛と書いた.
親がメリケンかぶれなので,そういう名前を付けたらしい.
その後,実際にハワイに住み始めたため,ちょうどよかったと思っているらしかった.
キャサリンとぐっさんはいいカップルだった.
当時のぐっさんは男前だったので,誰もが羨むカップルだった.
しかし,カップルの関係は長くはなかった.
年末に起こった大雨の後,二人をある悲劇が襲った.
大雨の影響で近くの川が増水し,ぐっさんの家のものが流されていた.
そして,ぐっさんは流されたものを探す日々が続いていた.
ぐっさんに付き添って,キャサリンも一緒に探してくれていた.
ぐっさんが一番見つけたかったものは,チビ(ペットとして飼っていた木の枝)だった.
ずっと探していたが,チビは見つからなかった.
両親が使っていたさまざまな玩具は見つけれたのに(両親は他人が見つけなくてよかったと思ったらしい),自分の探し物は見つからなかった.
ぐっさんは悲しんでいた.
悲しむぐっさんを見て,キャサリンも悲しくなっていた.
悲しみから解放されるために,キャサリンはチビの代わりになる何かをぐっさんに見つけてもらうことを考え始めた.
キャサリンは鉛筆が好きだったので,鉛筆に関するものが良いと思った.
それで,ずっと使える鉛筆型のシャープペンシルをプレゼントすることにした.
キャサリンは早速,シャープペンシルを買いに出かけた.
買い物をするために外を歩いてしばらくすると,何やら頭上が騒がしいことに気が付いた.
そして,キャサリンがふと上を見上げると,空に円盤型の何かが飛んでいた.
直感的にUFOだと思った.
そう思った瞬間,キャサリンの意識が遠のいた.
しばらくしてキャサリンの意識がはっきりしたとき,目の前にはメカメカしい機材が並んでいた.
UFOの中だと気付き動こうとするが,キャサリンは全く動けなかった.
何やら大変な状況であることに気が付いた瞬間,キャサリンは最新型のボールペンに変えられてしまった.
UFOに乗っている宇宙人ルックの着ぐるみを着た科学者らしい人が「はっはっは,本当にボールペンになっちまったぜ.実験は成功だ.」と大きな声で言って,そのボールペンを使い始めた.
この瞬間から,キャサリンはボールペンとして生きることになってしまった.
キャサリンが突然失踪してしまい,ぐっさんはこれまで以上に悲しんだ.
辛さを忘れようと,いろいろ試みたが,なかなか立ち直れなかった.
そんなぐっさんを見て心配になった両親は,ショッピングモールに連れ出し,気晴らしをしてもらおうと考えた.
そしてぐっさんと両親は出かけることにした.
ぐっさんにとっては久しぶりの外出だった.
久しぶりの外出で頭のネジが飛んだのか,ショッピングモールでは,いろんなものを買いまくった.
その中に,たまたま鉛筆型のシャープペンシルも入っていた.
家に帰ってしばらくして,ぐっさんが買ったものを見直しているとき,そのシャープペンシルを手に取って,黙り込んで,微動だにしなくなった.
ぐっさんには,そのシャープペンシルのさきっぽがキャサリンのおっぱいのように見えたのだった.
ふとキャサリンを思い出して,ずっとそのシャープペンシルを大切にしようと決めたのだった.
そんな過去があったせいで,今でもずっとそのシャープペンシルを大切に使ってとのことだ.
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