Wednesday, March 16, 2022

器の大きさを美味しんぼから知る

美味しんぼ第1集7話はなかなか秀逸だった。

デパートの開店に際して、山岡が取材に出向くのだが、そのデパートの会長である板山に「きれいに取り扱った野菜より、もぎたてとれたて、土付きのほうが品質が良い」的なことを指摘する。周りが微妙な空気になるも、板山会長は「商売のヒントもらった」的なことを言って大喜びし、その指摘をカバーするような商売を始めて、さらに成功する。という話だ。

私の感覚なら、ビジネスでの正論は、良いことを部分的に認めてもらえても、計画にないダメージになるので、徐々に変えるとかがせいぜいである。大人数が関わっているなら、なおさらだ。だが、この漫画では、そんなぬるいことはせずに、ガラッと変える。

どこかのタイミングで現場の責任者が「家庭で1本のだいこんを一気に使うなんてことはないのだから、きれいに洗ってて良いじゃん、品質は料理屋で求めろよ」と、言いそうだが、ま、いいや。

この話の秀逸な点は、成功者にはパワーが必須であると、読者に暗示するところだ。成功者というのは、おうおうにして正論を素直に聞き入れて、即実行する。これは、器の大きさと良いものへの貪欲さを表している。ただ、このメンタルだけでは足りない。変化させるパワー(コストや流通経路の変更、人脈など)があってのことだ。計画を捨ててでも実行するのだから、普通なら人は離れていく。が、人がついてきて、成功しているのだから、他人から信頼が厚いこともわかる。だから、挑戦とか実行力とか器の大きさとかは、積み重ねた力があってのことであって、人生いきなり逆転とかそんなものはない。逆転を夢見てるんじゃない。と読める。すばらしい話だった。

逆転なんか絶対にない。むしろ、逆転を狙うというのは、頭がおかしい状態で、絶対に失敗する。だから、なんの努力もしないで逆転を語る奴は信用しちゃいけない。そして、自分の努力を自分で評価する奴は、ほとんど努力していない。つまり、クソだ。

本当に努力しているやつというのは、緊急性を無視して、重要順に行動する。急ぎの仕事なんかさせられない。つまりクソだ。

つまり、全員クソだ。

ちなみに私が一番好きなシーンは2話のフランス料理好きの放つ「シャトオ・ムートン・ロチルドか、ロマネ・コンティといくか」だ。この言葉以上に面白い言葉にはまだ出会っていない。

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